だから落ち着けっての。
おい、たーじぃ。
ふにゅ?
なにしてんだ?
動物園のクマのまねか?
まさかその歳になってゴジラの真似とか言わないだろーな。
ぱみゅ代。
ん?
そこに座りなさい。
こんな板間の廊下に座れるかっての。
せめてもう少し可愛く、バンダの真似してるの?
とか言えないのかね、この娘は。
思ったことも全部言ってはいかんし、ましてや思ってもみないことはまったく言えないんだよね。
またしちめんどくさい言い方して。
で、なにしてんだよ。
幾らオレが受験が終わったばっかで今は暇してるからって、たーじぃと何の生産性もない会話をするほどには暇じゃねーんだぞ。
ふん。
んじゃ、さっさと行けっての。
せっかく、オレ様が話しかけてやってんだ。遠慮せずなにがあったか言ってごらん。
なにがごらんじゃ。
なぜぱみゅ代はまず年長者に対する口の利き方を勉強しなかったのじゃ。
ちゃんとできるんだけど、たーじぃだけは別だ。
いつもやってることが大事なところで出るんじゃそ。
ん?
それにじぃを特別扱いとか、愛の告白と受け取っていいかのう?
ああいえばこういう、こういえばああいう。
まったく口は減らんって本当だな。
ま、それだけ元気なら、大丈夫だろう。
オレは行くわ。
まてまて。
せっかくだから話を聞いていけ。
さっさと言えっての。
う、、うん。
あのな。
その。
なんだよ。
まあばあのことかよ。
ん、なんで分かる。
たーじぃのその顔はまあばあのことって誰でも分かるんだよ。
どうせ、あれだろ。
LINEの返事が来ないとかだろ。
ぱみゅ代。
ん?
いつから人の心を読めるようになったんじゃ。
たーじぃなんか、顔に気持ち書いてるから、誰でも分かるっての。
うむ。
それに、最初の手術の入院の時も、まったく同じことがあったじゃねーか。
成長しろよ、たーじぃ。
う、うるさいわい。
で、今回は手術じゃなくて、抗がん剤、しかも前回とまったく同じやつだから、アナフィラキシーの心配もない。
まあ、そんなに心配することもないだろうよ。
う、ま、まあな。
たーじぃはほんっと、いつもは放ったらかしのくせに、心配しだすと底無しなんだからなあ。
うう、うむ。
ほれ。
見せてみ。
な、なに、プライバシーの侵害じゃ。
どうせ、まあばあが返事を書きたくなくなるようなトンマなこと書いてるんだろ?
かわいそうだから、オレが代筆してやっから。
それとも前みたいに、病院に電話してやろっか?
いや、そこまではしなくてもいいとは思うが。
それがなぱみゅ代。
既読にもならんのじゃ。
あ~。
なるほど。それは心配だな。
きっとまあばあは、抗がん剤でシンドイから、さらに面倒くさくなることが確定してるたーじぃのLINEに対応する余力がないんだな。
うう。
じぃのLINEを読めば元気になるはずなんだがのう。
んじゃ、ま、ちょっと見せてみ。
ぷ、ぷらいばしーのしん・・・。
たーじぃ。
なんじゃ。
変なYouTubeの動画、送りつけてんじゃん。
変なって、笑えるじゃろ?
笑いのセンスが全く違うなあ。
そやろか?
まあ、たーじぃ。
返事が欲しければ、質問を送るという鉄則を、その歳になって知らんのか。
忘れとった。
ま、軽く夕食のおかずでも聞いてみ。
あんまり重たい質問はさらに無視されるぞ。
わかった、ぱみゅ代。
ちょっと送ってみる。
ほんと世話やかせるな~。
しっかりしろよ。
ぱみゅ代~~、返事きた~~~。
ほんっとにメンタル豆腐なんだから。しっかりしれっ。
たーじぃ。
お、なんじゃぱみゅ代。
いよいよ愛の告白か。
最近、なんか丸くなってきたんじゃねーか。
人は自分の気持ちに素直にならないとあかんのじゃぞ。
ママがちょっと心配してるみたいだからさ、ちょっと様子伺いにきたんだ。
ぱみゅ代。
なんだ?
全然会話が成り立っていないことに気がついているか?
寝言には反応しちゃダメっていうのは、常識なんだよ。
寝言じゃないわ。
それなら、ボケてきてるようなので、ますます心配だぞ。
うるさいっての。
それで、なんか、最近こっそりお菓子とか食べてるだろ。
ギクッ。
まあばあもママもきっちり食事には気をつけてるのに、その太りようだし、病院に行って薬増やされたそうじゃないか。
う、うむ。
たーじぃは、ほんっとにメンタルが豆腐だからなあ。
まあばあが心配で仕方ないんだろ。
ば、ばか、誰がじゃ。
たしかにガンの再発が見つかってから、発熱がつづいたり、ちょっと大変だったからなあ。
たーじぃがストレスたまるのも分かるよ。
ん?
なんじゃ、珍しく優しいじゃない。
あのさ~。
オレはいつでも優しいの。
ジェントルレディーなの。
あんまりきかん言葉じゃが。
それに最近、全然運動もしてないだろ。
う、うむ。
前はあんなに頑張ってたのに。
う、うむ。
仕方ない、大学の入学までは少し時間があるから、朝走るのと、トレーニング、付き合ってやっから。
え?
ほんとか?
大サービスだぞ。
ママがほんとに心配してんだよ。
まあばあが体調悪いのに、この上、たーじぃまで悪くしてどーすんだ。
頑張ってできることやらなきゃさ。
う、うむ。
ここでちゃんと踏ん張ってこそ、だぞ。
う、うむ。
ちゃんとトレーニング再開したらさ、ぱみゅ代はじぃのお嫁さんになっくれるのか?
じゃあ、明日はちゃんと朝5時起きだぞ。
とりあえず、朝はちゃんと起きることできるだろ。
起きたら、ちゃんとお嫁さんになるって言ってくれるのかのう。
ジャ、オレも夜型だけど、もう寝るから。
明日な。
ぱみゅ代。
じぃの問いかけに応えんかいっ。
たーじぃはもう寢てるみたいだからな。
寝言には反応しちゃダメっていうのは、常識なんだよ。
寝言なことを祈るわ。
「君の膵臓をたべたい」に、いちゃもんつけるモテナイ男の悲哀。
たーじぃ、今朝はまあばあどうたった?
おお、ぱみゅ代。微妙に熱が高くなってきているみたいで、心配じゃ。
そうか。朝は今までそうでもなかったんだけどな。
ぱみゅ代、夜は心配して覗いてくれてるそうで、ありがとうな。
まあ、オレは受験勉強のこともあったりで、夜型がちょっと習慣になっちゃってるから、気にすることねーよ。
ポカリ飲ませてあげたり、軽食作ってくすり飲ませてくれたり、ひえぴた貼ったり、いろいろとしてくれてるそうじゃのう。ほんとにありがとよ。
いやいや、たーじぃにそんなに改まって言われると、逆に気持ちわりーよ。まあ、昼間はママもおばあちゃんも居るし。夜はオレだろ、で、早朝はジジィになって朝がはやいたーじぃが居るから、ま、完璧だな。
ジジィだけ余計じゃ。
話変わるが、ようやっと、「君の膵臓をたべたい」を見たんだってな。そんで、ママにさんざん文句言ったらしいじゃん。ママが困ってたぞ。
だってぱみゅ代、タイトルが秀逸すぎて、期待が大きすぎたんじゃ。
まあ、そうだよな。このタイトルはほんとにすごいよな。
まさか恋愛映画にこんなタイトル付けるとはな。
ほんと、すごいよな。
たしか、なんとか殺人事件、とかいうタイトルの、まったく殺人事件とは関係ない小説とかもあったな。
まあ、まさに最初にやったもん勝ちって感じじゃな。
もう同じことはできないわな。
とかいって、たーじぃなら「君のこころを食べたい」とか恥ずかしげもなくでっちあげしそうだけどな。
なにいっちょる。
で、どうダメだったんだよ。いわゆる感動ポルノってことか?
いやいや、ぱみゅ代。
じぃはな、感動ポルノだからといって、嫌いとかダメとかいうつもりはないんじゃ。
だってそうじゃろ。
本当の元のポルノだって、いいものもある、わるいものもある、それにポルノだって、そのジャンルは多岐に渡り・・・。
あのな、たーじぃ。
レディーにポルノの講義をするな。二度と口きかんぞ。
う。いやまあ、そういうことで、あくまでじぃの嫌いなのは、ダメな感動ポルノじゃ。だって、極端なことをいいだしたら、感動ものは全部感動ポルノになってしまうしな。
で、これは、ダメな方だったと。
うむ。
もうまったくダメじゃ。
ほー。
まあタイトルが秀逸なことは、認めるが、じぃのようなひねくれものにかかれば、これが恋愛映画だと聞いた瞬間に、ああ、膵臓の悪い女の子を好きになって最後死ぬ話だな、ともう、全部の粗筋が分かるのじゃ。
中国の薬膳(やくぜん)にある「同物同治(どうぶつどうち)」という考え方だな。
ほっほ~。さすが医者を目指すぱみゅ代じゃのう。
その通りじゃ。
たーじぃはきっとマンガで知ったんだろ。
そうじゃ。「美味しんぼ」で・・・って、ちゃんとそれ以前からしっとったわい。
まあそういうことにしておいてやるから、それで?
やっぱり人間の生死、特に美少女の生死を扱うって、もう幼稚園レベルの感動ポルノだったなあ。
ひねくれもんのたーじぃらしい感想だな。
だれがひねくれもんじゃ。
まあ、あれじゃ、世界の中心で愛をさけぶ、というクソつまらん覚悟のカケラもない、幼稚園児が砂場で遊ぶような恋愛を描いた映画と同じレベルじゃな。
今、たーじぃは、全世界100億人の女性を敵に回しました。
ふん、もともとじぃの味方の女性なんか、片手ぐらいしかおらんからへっちゃらじゃ。
まあばあ、ママ、菜奈、おい、たーじぃ、片手も居ないけど、どーする?
ばか、ぱみゅ代と結衣さん(たーじぃの息子のお嫁さん、ぱみゅ代のおばあちゃん)もいるじゃろうが。
ほっほ~~。それはどうかなああ。
ふんっ。まあいい。
このドラマの決定的にあかんところは、主題が中途半端すぎるっちゅうことじゃ。
ほー。
大きな主題のひとつとして、
人間はいつ死ぬか分からない、それは病気と闘っている人も平等、
ということがあるんじゃけどな。
うん。
そんなもの、わっざわざ最後のデートの寸前にしなくてもいいじゃろ。
いいか、これは映画だぞ。
つまりウソの世界じゃ。難しくいえば虚構の世界。
実際にもこんな悲劇は山のようにあるじゃろうし、
悲劇、死んでカワイソウ、な話なら、山のようにある。
しかるにっっ。
わざわざ物語として描くからには、何かいいたいことがあるんじゃろう。
なにがいいかいのか?
最後のデートの時は、背後に気をつけろか?
人をばかにすんじゃねえっちゃうじゃ。
たーじぃ、落ち着け。
だから、だれもが人はいつ死ぬか分からない、その時その時を精一杯生きようってことだろうよ。
人は強くない。
実際、真実としてこうしてぱみゅ代と話している楽しい瞬間に、心臓発作が怒って死ぬかもしれない。
おかしな国が爆弾落とすかもしれない、強烈な地震が起こるかもしれない。
だがな。
人はずっと死を見つけて生きて行けるほどは強くない。
だれもが死に向って時間を過ごしてる。
はっきりと分からないから、観念として受け入れて生きることを充実させるのが関の山じゃ。
なんか、またメンドクサイことをいい出したな。
それをじゃぞ。
その苦しい死といやおうなく向き合い続けなければならない、もう余命いくばくもない重病の女の子の最後の希望、楽しみを、くっそくだらん当たり前の真実、誰もがいつ死ぬか分からない程度のことをいうためだけに、奪ってしまう、これが映画人のやることかっっ。
なんか、さっきから随分と混乱してること言ってるけどさ、
要するに、たーじぃの言いたいことをまとめると、
主人公を演じた浜辺美波ちゃんが可愛すぎて、いくら映画の中だけでも死ぬなんて耐えられない、と。
こういうことだな。
ぱみゅ代くん。
なんだよ。
そこに座りなさい。
さっきから座ってるが。
いったい、ぱみゅ代くんは、なぜ、医学部合格するぐらいの明晰な頭脳を持ちながら、じぃの話は理解できないのかな?
完璧に理解しているが。
どこがじゃ。
それとあれだろ。
どーせ、あんなネクラなやつがしぬほど可愛い女の子に好かれるのはあり得ないとか、イケナイことを映画の中でやらなかったから、浜辺美波ちゃんのラブシーンが中途半端だったとか、そんなことだろ?
ち、ちがうわ。
あのな、たーじぃ。
女の子はみんなそりゃイケメンが好きだが、たーじぃだってよく言ってるだろ。鑑賞するだけならかわいい子でいいが、それだけで好きになるとか、男なめてんのかって。
まったく、同じことをたーじぃにいうぜ。
イケメンだからって、それだけで本気で好きになるとか、女をなめんなっての。
だいたい、たーじぃからして、かわいいから浜辺美波ちゃんのこと好きなんだろ。
ばか、ぱみゅ代。
じぃはな、かわいいだけで浜辺美波ちゃんを好きなんじゃないわ。
その清楚とした雰囲気、かわいいだけじゃなく、さみしいも同時に表現できる演技力、そしてその優しくかわいい声、全て、総合的に好きなんじゃ。かわいいだけじゃないわ。
それで、その浜辺美波ちゃんが最後カワイソウな目にあったことが許せないと。
(黙って頷くたーじぃ)
そして、好きになった相手が、一見ウジウジ系のネクラのようだが、秘密はちゃんと守れる、一人でいることができる、自分の世界を持ってる、たーじぃの憧れをちゃんと体現してる、さらにはたまたまイケメンだったことが許せない、と。そういうことだろ。
(黙って頷くたーじぃ)
よしよし。
そうやって素直のところが、たーじぃのいいところだ。
そんなひねくれなくてもいいんだよ、たーじぃ。
ゆったりした気分で、映画を楽しめばいいんだ。
だって、たーじぃには、どんなことがあっても、ちゃんと片手分の味方が居るんだからな。
言わすな。
いや、オレは全然大丈夫。
まあばあ、元気無くしてないか?
あら。彩代ちゃん。
大丈夫。
そだよ。
ちゃんと検査してたから、早期で発見してくれた。
前回と全然違うから。
元気なくす必要まったくないよ。
ふふ。そうね。
すごく順調で、検査の間隔ももう少し広げよう、という話のすぐにあとだったから、ちょっとびっくりしただけ。
そだよな~。
まったく先生もいい加減なこと言うなだよ。
ま、仕方ない。
ほんとにびっぐりするぐらい順調だったもん。
たーじぃ、落ち込んでないか?
まあ、わたしには、彩代ちゃんとまったく同じこと言ってたわ。
ほー。
たーじぃもなかなかやるじゃないか。
ふふ。
それにしても、彩代ちゃん、ごめんね。
ん?
なにが?
受験寸前の大事な時に、心配かけちゃって。
なに言ってんだよ。
ごめんなさい。
まあばあ、辞めてくれよ。
たーじぃが言ってたことあるんだけどさ。
なあに?
よく今が人生で一番大事っていうことがあるだろう。
あるね。
確かに踏ん張りどころっていうのはあるだろうけどさ。
いつだって人生で大事な時で、今が一番とか、大事じゃないとかそんなものはありゃしないんだって。
たーじぃも、時には正しいこというなあって感心したんだよ。
なんか、そんなこと、言いそう。
うん。
いつもはあほなことばっかり言ってるから、時々こういうこと言うとなんか目立っちゃうよなあ。
そうね。
だから、そんなこと、まったく気にしなくていいんだよ。
むしろ気合が入るってもんだよ。
ふふ。ありがとう。
なんかお礼言われるのも違う気がするが、ま、そんなところだ。
入院の時には入試ももう終わってるから、また、なんでもオレにできることがあったら、言ってくれよ。
ありがとう。
まだつた。そんな改まって言われると照れるな。
たーじぃのことも任せとけ。
うじゃうじゃ言ってたら、ちゃんと気合入れてやっから。
そうね。お願いね。
なんせ、世話かかりすぎるからな、たーじぃは。
それで明日、みんなで焼肉食べに行くんだろ?
彩代ちゃんも行く?
いや、行く行く。行くに決まってるよ。
大丈夫? 受験前だけど。
一日中って訳じゃなし、かえって栄養つけてがんばれるってもんさ。
楽しみだな~。
そうね。
たーじぃじゃなくて、おじいちゃんとおとうさんが予約したんだよね。
あの二人はこういう時、絶対にケチらないから、期待できるな~。
ほんとね。
よし。明日のために、今日は早めに仕上げて寝るとしよう。
まあばあも、もう寢なよ。
ありがとう。
おやすみなさい、彩代ちゃん。
おやすみ、まーばあ。
たーじぃにお祝いされる。
本当によくがんばったの~。
まあな。オレはまあばあの血か濃くて良かったよ。
たーじぃの血が勝ってたら、もう口だけ坊主だったからなあ。
なに言っちゃるっ。
まあまあ。彩代も今日は疲れてるんだから、漫才はそのぐらいにして、ゆっくりやすみなさい。
ま、そうだな、たーじぃの相手はまた明日してやる、、、と思ったけど、特別に許可してやッから、ちょっと部屋来いよ。
いよいよ、受験も終わったし、じぃに愛の告白か。
もう来なくて言い。
いやいや、行く行く。
いやでもぱみゅ代、ここまでほんとに良くがんばったな。
今日は簡単に好きなケンタッキーだったが、また改めて御馳走を食べに行こう。
ああ、そうだな、さんきゅー。
合格前にしておかないと、ぱみゅ代が落ち込んで暴れたら大変じゃな。
あのな。
オレはたーじぃとは違うんだよ。失敗はしないの。
というか、ぐらい失敗しても、来年まで続く道になるだけだから、計画建て直すだなんだ。
ぱみゅ代はほんとに強い子じゃなあ。
これぐらい普通。
一度ぐらい失敗したからって、落ち込んでられんし、そもそもまだ結果でてねーんだよ。
たーじぃはほんとに弱いからなあ。
なに言っちょる。
いやいや、今回はちょっと受験前だったからゆっくり話せなかったが、それでも、がんばったじゃん。えらかったぞ、たーじぃ。
ん?
まあばあのガン再発のことか。
ああ。すごく冷静を装ってまあばあを励ましてたって、ママが言ってた。爪の垢程度は見直したわ。
ふんだ。
いや、でも、ほんとに。
まあ、受験も終わってヒマでヒマで仕方ないから、これからはちょっと話きいてやっから。
まあ、検査でも順調だったからちょっとショックだったけどな。
そうだな。でもまあばあが一番ショックだっただろうし、そこをちゃんとやせ我慢して支えようとしてるたーじぃも結構がんばってんぞ。
まあ、おじいちゃんはクールだから安心だけど、たーじぃはな。
なんだよ。
いやいやなんでもない。
でもな、たーじぃ。
まあばあにはほんとうに感謝しなくちゃな。
ん?
だってそうだろ。
こんな時でも、ちゃんとご飯は作るわ、選択はするわ。もっとママに甘えたらいいのにな。
これからは、オレももっと手伝えるし。
そうじゃな。
まあ、たーじぃは、もうシチメンドクサイことは一切考えず、とにかくニコニコしといたらええねん。
それしかできんねんから。
ふんだ。
いや、たーじぃがニコニコしてない時はもう仏頂面しかしてないから、ニコニコしてるのが、世界平和のためだ。
見張ってるかんな。
よし、話てみ。聞いたるけん。
お~い、たーじぃ~。
おお、ぱみゅ代、共通テストお疲れさんじゃったな。
ほんっと疲れたよ。
じぃは優しいから、出来は聞かずに居てやるからな。
なに言ってんだ。
ちゃんと目標には届いてるから、こうしてしちめんどくさくても、たーじぃの話相手になってやろうとしてんだぞ。
なにぬかす。
共通テストの最中はさすがに話聞いてやれなかったけどさ。
寂しかっただろ?
なにぬかすの二乗じゃ。
まあまあ強がるな強がるな。わかってるわかってる。
ま、それはそうとして、今日は、40年前、たーじぃの好きな高橋幸宏さんが亡くなった日、なんだろ。
というか、亡くなったのを知った日なんだろ。
ああ、そうじゃ。
さっきママとまあばあが、たーじぃが思い出して寂しそうにしてたから、時間あるなら話きいたげてって言われてさ。
きっと、ママとまあばあは、もう耳にタコなんだろうなあ。
仕方ないじゃろう、ぱみゅ代。
話してると永遠に出てくるんじゃから。
そんなに話せるの、きゃりーぱみゅぱみゅ様だけだと思ってたよ。
うむ。
考えると、きゃりーぱみゅぱみゅ様に繋がったのも、元々はYMOが好きだったから、ということなんじゃな。
それに、そのYMOの中でも、最もポップなのが高橋幸宏さんだったのじゃ。
ほー、そーなのか。
そうじゃ。最近は勉強ばっかりして世間知らずなぱみゅ代でも、「RYDEEN」ぐらいは知っとるじゃろう。
たーじぃよりはよっぽど世間知ってるっての。
ライディーンはオレも知ってるわ。馬の蹄の音で始まるやつだろ。
おおっ。えらいぞ、さすがぱみゅ代じゃ。
確か大分前に、たーじぃにライディーンを扱った番組を見せられた気がするな。
で、どうじゃ?
良い曲じゃろう。
聞きやすいよな。言われてみると、きゃりーぱみゅぱみゅ様に繋がる気もしてきたな。
そうなんじゃ。
これは少しずれる話なんじゃが、同じYMOの細野さんが、Perfumeさんの楽曲を頼まれたことがあったそうなんじゃ。
きっと、中田ヤスタカ御大が関わる寸前ぐらいだったと思うんじゃが、その時に細野さんが、Perfumeには自分より幸宏の方が合ってる、と言ったとかいう話がネットに転がっておった。
ほー。そうなのか。
すると、二つぐらい間違ったらという表現は違うな、二つぐらい転がったら、もしかして高橋幸宏さんがきゃりーぱみゅぱみゅ様の楽曲を担当する、ということもあったかもしれないのかな。
まあ、中田ヤスタカ御大が自らスカウトしたんじゃから、その可能性はまあゼロに近いと思うが、それでもそれを考えると楽しいな。
なんせ高橋幸宏さんも細野さんや教授と同じく、楽曲提供においてもなかなか侮れん才能を発揮するからのう。
実際のところ、全く縁がなかったの?
いや、実はそうでもないのじゃ。
ワールド・ハピネス(WORLD HAPPINESS)という、高橋幸宏さんがキュレーターを勤めていたフェスがあるんじゃが、そこに2012年の8月12日に出演しているんじゃよ。
2012年と言えば、ファーストフルアルバム、ばみゅぱみゅレボリューションが発売された年じゃぞ。5月に発売で8月に出演だから、これはさすが、高橋幸宏さんの慧眼といえるじゃろうのう。
ほー。
その時はまだ、たーじぃはきゃりーぱみゅぱみゅ様に目覚めてなかった訳だな。
ううう。
じゃが、実はその2年後、2014年の8月にも同じフェスにきゃりーぱみゅぱみゅ様が出演されておるのじゃ。
しかもじゃぞ、その時は、METAFIVEとして出演された高橋幸宏様ご本人、更には、細野晴臣さん、電気グルーヴさんまで出てて、なぜ行かなかったのか、今に至るまで後悔のしっばなしじゃ。
ほー。
それに2012年の時も、YMO名義でYMOが出演されたんだから、その気になってたら見に行っていたはずじゃ。
もう全く自分の行動力の無さには呆れるばかりじゃいっ。
お、おい、たーじぃ泣くなよ。
おおお。すまん。思い出すとどうしてもな。
大袈裟に泣くんじゃなくて、そんなふうに泣くの、初めて見たよ。こっちも悲しくなるだろ。
なんか涙が自然と溢れてくるんじゃ。
元気だせ元気だせ。
こうやって忘れず話して、そして音楽聞いてってしてるんだから、幸宏さんも喜んでるって。
そうじゃろか。
それに取り返しの付かないことはもういいじゃん。
これからだよ、これから。
そうじゃな。
それで、ライブとかにも行ってたんかい?
おお、そうじゃ。
最初にライブに行ったのは、1982年じゃった。
前年に出た「what me,worry?」というアルバムの後のツアーでな。邦題は「ボク、大丈夫?」といういかにもユキヒロらしいタイトルじゃった。
今Wikiで調べたら1982年7月19日、夏休み寸前じゃな。
この日に神戸でやったライブじゃな。
友人と一緒に行った。
そいえば友人が録音できるちっちゃいウォークマンを持ってて、録音してたら、途中で係員に見つかって没収されたなあ。
それ、完全に違法だな。
たぶん黒幕はたーじぃだろう?
ぎくっっっ。
若気の至りで許してくれ。
たぶん、探したら今でも、カセットテープあるんじゃないかな。
全く反省してねーな。
このツアーでの最終公演、東京では坂本龍一さん、教授がゲストに来てて、ドラムを叩いたそうで、めちゃくちゃ羨ましかったのを覚えているな。
そりゃ見たかっただろうなあ。
これもFMでライブがあって、カセットテープに録ってて大事に聞いていたなあ。これは間違いなく今もとってるが、40年後、幸宏が亡くなる年に完全版としてリリースされたんじゃ。しくしく。
よしよし。元気だせ。
当時は確か高1で、こづかいもそんなになくて、京都と大阪には行けなかった。というか行けなかったんじゃが、今から思うと実に残念じゃ。
さっきも言ったけど、どうしようもないことは・・。
ああ、そうじゃったな。もう言わんもう言わん。
それより、ライブはどうだったんだ?
もしかして、初めて行くロック系のライブじゃなかったのか?
昔すぎて忘れてしまったか?
そうじゃな。もしかしたらそうかもしれん。
たぶんそれまで行ったライブって、お嫁さん候補だった、山口百恵さんと伊藤つかささんぐらいだったんじゃないかな。
お嫁さん候補って。
たーじぃが長生きするのも分かるなあ。
そうじゃろう。その分、振られた時の悲しさったらなかったぞ。
ああ、さようですか。
ライブではな、当時、ちょうどヒット曲を出す寸前だったと思うんじゃが、一風堂のギター、土屋昌巳さんも来ててな、もうめちゃくちゃかっこよかったぞ。
ドラムは、高橋ユキヒロさんの一番弟子と言い張っておったスティーヴ・ジャンセンさんという、イギリスのJAPANというバンドのドラマー。
そして、立花ハジメさんがサックス。ギターもひいておったな。
最後に、なんといってもベースに細野さん。
この時、雑誌雑誌のインタビューで、高橋ユキヒロさんのライブのバックはどうですか? って聞かれて、いや、YMOのバックをずっとやってましたから、って答えてて大爆笑したよ。
ん?
確か細野さんって、YMOのリーダーだよな。
あっ、そうか、リーダーなのにバックやってるってところか。
そういうちょっと自虐的なギャグもなんか、当時YMOらしかったなあ。
自虐も行き過ぎるとあかんけどな。
わかっちょるわかっちょる。
自虐とはちょっと違うんじゃが、当時英語のテストにwhat me,worry? って書いたら、英語の先生が、what me,it's worry? って添削してくれたなあ。
どうせその英語の先生もお嫁さん候補だったんだろ。
ぱみゅ代は実にじぃのことを良く分かっちょるなあ。
とても可愛くと優しくてキビシイ先生じゃった。
だがな、ぱみゅ代。
当時じぃには、伊藤つかささんというフィアンセが居たんで、泣く泣く諦めたんじゃ。
はいはい。
それで、幸宏さんはずっと聞き続けたんだ。
うむ。それからずっと聞いてて、特に高校の時はまさに神じゃったな。
YMOが解散してからはもっと夢中になって聞いておった。
しかしまあ、その後、ジャズと出会ったりして音楽の幅が一気にひろがってな。
たーじぃの音楽の原点ともいえるんだな。
まさにその通り。
また、コムズカシイ話になるが、ヒップホップの祖の一人と言われる、アフリカンバンバータさんは、クラフトワーク、YMOの曲も採り上げているから、その影響は脈々と現代まで続いているんじゃ。
たーじぃが黒人音楽に向ったのも、そういうところもあったのかな。
うむ。
やはり嗅覚が鋭いからなう。
がっはっはっっ。
いや、元気でてきて良かったよ。
うむ。
ここから、さらにジャズ、R&B、そしてラテン音楽と講義は続けたいところじゃが、ぱみゅ代は二次試験に向けての勉強があるから、この辺にしていてやる。
ほ~。
気も使えるんだなあ。
当たり前じゃ。
ほどほどにしないとおばあちゃんとぱみゅ子に叱られるわい。
ふふ。
でも、ぱみゅ代。
無事に合格した暁には、一週間ほどみっちりと音楽講義をしてやるから、それを励みに受験勉強もがんばるのじゃぞ。
・・・・・・・・・・・。
お、おう。
親戚の結婚式に行ってきました。
こんにちは~。
ぱみゅ子だよ~~。
昨日日曜日は、おばあちゃんの親戚の結婚式に行ってきました。
お嫁さんはウエディングドレスを着ていて、とても綺麗でした。
おばあちゃんに聞いたら、普通は神様や仏様に結婚を報告するんだけど、
今回はそれはなしで、お友達の前で結婚を誓う方式なんだって。
おじいちゃんは全然関係ないのに感動して泣いちゃってました。
おばあちゃんは、もう無くなったおばあちゃんのおばあちゃん、
わたしにはひいおばあちゃんかな、
の写真がでてきて、思い出して泣いてました。
料理もフランス料理とかで、全然たべたことがなかったものばっかりだったけど、
とても美味しかったです。
知り合って3年で結婚したそうです。
それを聞いておじいちゃんが、
オレらは、知り合って結婚まで10年ぐらいかかったなあってしみじみ言ったら、
おばあちゃん、
わたしらにとって結婚なんか、長い歴史の節目でしかない、
特に意味はないんや、
とか言ってました。
いつもおじいちゃんが言うようなことだなあと思ったら、
そのあと、
だから、いつ自然消滅しても驚かん。
って言って、おじいちゃんの目をくるくるさせてました。笑
おじいちゃんとおばあちゃんがこれからどうなっても、
わたしとおばあちゃんは、ずっとわたしとおばあちゃんだもん。
かわらないもんね。